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Feature|2018.05.18

Into the life of a woman /
Maki Nomiya

女性の人生に寄りそう服

「女性の人生に寄りそう服」をテーマとして、
輝く女性の方々に執筆いただく連載企画
音楽活動に加え、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、
エッセイストなど多方面で活躍している野宮 真貴さんのショートエッセイをお届けします。

新しい服は、新しい人生の1ページになる

 私の一番好きな部屋は、衣裳部屋。部屋、と言うほど大それたものではなくて、一般的なウォークイン・クローゼットですが。
 少し違いがあるとしたら、いつでも入った途端に気分が上がるように、壁一面をピンクにペイントしたことでしょうか。
 そこには、普段着とライヴや人前に出るための衣装が所狭しと置いてあります。そしてどうしても断捨離できない想い出の服も、棚の奥底にこっそりと隠してあります。家族も知らない私だけの秘密です。


 一番古い服は中学生の頃に買ってもらった(実に40年以上前!)、パッチワークデニム(当時流行っていたのです)のスカートと、お揃いのベストとキャスケットの三つ揃え。他にも、母から譲り受けたピエール・カルダンの60’sワンピース。昔の彼にプレゼントしてもらったヴィヴィアン・ウエストウッドのTシャツ。デビューしてはじめてのお給料で買ったKENZOのマイクロミニ。30代になって「一生物だから」と自分に言い聞かせて手に入れたドルチェ&ガッバーナのミンクのジャケットなどなど。

 クローゼットの中で長年じっくりと熟成された、言うなれば「家庭内ヴィンテージ」は、私が人生の場面場面で選んで着てきた服に他なりません。それは、私の履歴書。おおげさに言いますと、私の人生そのものなのです。

 これらの服をもう着ることはありませんが、見ると当時の想い出がすぐに蘇ってきます。だからクローゼットは、私だけのタイムマシーン。このマシーンには私にしか見えない不思議なダイヤルがついていて、そうと願えば、どんな時代にも連れて行ってくれます。

 それと同時に、過去に着た服から今着る服のインスピレーションを受けることもたくさんあります。


 filageの2018 Summer Collectionの新作の中に、パープルのワンピースに同系色のターバンを巻いたコーディネートを見つけたとき、新鮮ながらも懐かしい気持ちになりました。

 私のタイムマシーンのダイヤルは70年代中期を指しています。
 「そういえば当時、サファリ、モロッコブームといった、エスニック・ファッションが流行っていたっけ」
 70年代に母親が着ていたサファリ・ルックのパンタロンスーツや、ペイズリー柄のスカーフの記憶が蘇ってきます。
 そんな遠い記憶と、2018の最新ファッションが繋がったときの楽しさといったら!(もちろん母のサファリ・ルックとスカーフはクローゼットの秘密エリアにしっかりキープしています)
 でも、ここでやってはいけないルール(特に大人は)があります。それは、たとえ70’sルックがリバイバルしても、当時のものをそのまま着てはいけないということ。おしゃれどころか、まるで当時からずっとその服を着ていたような古い人にしか見えませんから。
 ただし、スカーフやベルトなどのアクセサリー類は、ヴィンテージでも十分にコーディネートのアクセントになってくれるので活用しましょう。私は、新しいfilageのワンピースに、母から譲り受けたペイズリーのスカーフをターバン代わりにして、持っているバングルを両腕に総動員して、心はモロッコに旅したいと思います。


 どんなにたくさん服を所有していても、いくつになっても、真新しい服に袖を通すときのワクワクする気持ちは、何事にも代えがたい喜びです。そこに遠い記憶のスパイスを加えたら、他の誰でもない自分だけのコーディネートの出来上がり。それがその人だけの個性になっていくのだと思うのです。

 さあ、新しい季節にお気に入りの服を手に入れて、ひとさじの想像力をプラスして、自分だけのワードローブの履歴を新しく書き換えていきましょう。
 なんだか素敵なことが起こるような気がしませんか?

profile

野宮 真貴 / Maki Nomiya

ピチカート・ファイヴ3代目ヴォーカリストとして、90年代に一世を風靡した「渋谷系」ムーブメントを国内外で巻き起こし、音楽・ファッションアイコンとなる。2010年に「AMPP 認定メディカル・フィトテラピスト(植物療法士)」の資格を取得。2018年はデビュー37周年を迎え、音楽活動に加え、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍している。シリーズ5作目となるニューアルバム「野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う」、エッセイ第2弾本「おしゃれはほどほどでいい」(幻冬舎刊)、JINSとコラボした「美人リーディンググラス」、プロデュースしたマニキュア「キュア・バザー」が好評発売中。

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