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Feature|2017.11.22

Into the life of a woman /
Michiko Fujiwara

女性の人生に寄りそう服

「女性の人生に寄りそう服」をテーマとして、
輝く女性の方々に執筆いただく連載企画
第10回目は、ヘア・メイクアップアーティスト/ライフスタイルデザイナー/「MICHIKO.LIFE」プロデューサー
藤原美智子さんのショートエッセイ第二弾をお届けします。

vol.10

私がお洒落をする本当の理由

 前回のエッセイに書いた通り、私は「赤いコート」で心がシフトした後、いろいろなことに挑戦し始めた。その一つはトークショーの仕事。そして引き受けた理由は「綺麗な格好をする機会を作れる」と思ったから(!)。
 何しろ当時は、朝から晩まで休みなく撮影の仕事をしていたので年中、動きやすくて汚れも気にならないモノトーンのカジュアルな格好ばかり。
 好きなスタイルではあるけれど、そればかりではさすがに飽きがくるし、自分自身に対してもマンネリを感じていたし、‘綺麗な格好’をすることにも飢えていたのだ。

 初めてトークショーをした時の服は、今でも覚えている。
 それはネイビー色のモード感のあるパンツスーツ。ジャケットはウエストがシェイプされていて、パンツは太腿から膝までは細く、膝から下がフレアーになっているデザイン。身体のラインが綺麗に見えるし、私好みのフェミニンさとマスキュランさが程よく融け合っているこの一着は、その後、長らく私のお気に入りとなった。

 このファッションは主催側にも、終了後の来場者のアンケートを見ても好評であることがわかった。でも一枚だけ「地味な先生だと思いましたが、お話はとても良かったです」と書かれているアンケートがあった。
 これを読んだ担当者が「多分、お年を召されている方だと思いますが、その年代にはネイビーは地味に見えるのかもしれませんね」と慰めるように言葉をかけてくれたのだが、それを聞いた私はある事に気づいたのだった。
 人前に出る仕事の時は、‘色’は大事なポイントである、と。
 考えてみれば、遠くに座った観客にもハッキリと私を認知してもらうには、シルエットよりも色のほうが効果的。それは観客の身になれば容易に想像できることだ。

 それ以降、私はトークショーの時はTPO、つまりイベントの趣旨や開催時間、会場の雰囲気や広さ、観客のターゲット層に合わせて‘色’も考慮した装いを心がけるようになった。
 また、そのようなことを意識しながら、いろいろな場面で出会う女性たちを見渡しているうちに‘美しい人’や‘魅力的な人’というのは、その場に合った装いをしていることに気がついた。つまりTPOを考慮するのは普段の装いにおいても重要ということだ。

 それに気づくまでの私は‘自分が着たいものを着る’主義だった。それがお洒落であり個性だと思っていた。でも、それは単に若さの奢りだったのだ。自分の‘手持ちカード’の一枚を披露してあげるくらいの余裕で、相手や場に合わせられるのが本当の‘お洒落さん’だし、それこそが大人のお洒落と言えるのではないだろうか。


 メイクも然り。いつでも同じメイクで‘自分らしさ’を貫くのではなく、いろいろな装いに合わせてメイクを変えられるのが知恵ある大人であり、どの場面においても‘美しい人’になれる。
 ‘変える’と言っても、私のおすすめの簡単な方法は濃さを変えること。この方法であればメイク道具をそんなに買い揃える必要はないし、自分らしさを残しつつも装いに合った‘綺麗’の濃度にすることができる。

 例えば私は、こんな感じ。
 撮影の仕事の時や普段着はカジュアル派なので、ファンデーションやチークはごく薄め。眉はある程度、キチンと描くけれどアイラインとマスカラは軽め。アイシャドウもブラウン色を指で上瞼に軽くなぞるくらい。リップはモデルの衣装に付いてしまうと大変なので塗らない主義。
 そして、お出かけする時はファンデーションの量を2割増しにして、アイシャドウのブラウンはしっかりと塗り、目頭側にハイライトシャドウを塗ってメリハリをつける。アイラインは上下に引き、口紅とリップラインもプラス。普段着メイクよりも5割増しという感じだろうか。

 取材やトークショーなど人前に出る時は、さらにハイライターを下瞼部分に、艶パールを目尻のCゾーンにいれて、付けまつ毛も足す。すると自然な立体感が出るし、華やかさと存在感も出る。

 このようにTPOに合わせて装いやメイク濃度を変えると、他にも良いことがある。それは自分を新鮮に感じる頻度が増えること。それによって前向きな気持ちが持続すること。実は、それがわかったからこそ私はTPOを大事にするようになったのだ。

 装いを楽しむことは、自分を楽しむこと。それは、つまり自分に新鮮さを感じること。そして、それは生き生きとした魅力をつくる原動力となる――。実は、これこそが私のお洒落をする原動力となっているのである。

profile

藤原 美智子 / Michiko Fujiwara

ラ・ドンナ主宰。ヘア・メイクアップアーティスト/ライフスタイルデザイナー/「MICHIKO.LIFE」プロデューサー
多くの雑誌や広告撮影のヘアメイク、執筆、化粧品関連のアドバイザー、講演、TV出演等で幅広く活躍。栄養コンサルタントの資格を有し、食や健康、装い、暮らし、生き方なども提案。近著「新しい口紅は寝る前に試す」(講談社)他、著書多数。ライフスタイル全般を取り扱うブランド「MICHIKO.LIFE」を展開。

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