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Feature|2017.08.23

Into the life of a woman /
Naoko Tsuji

女性の人生に寄りそう服

「女性の人生に寄りそう服」をテーマとして、
輝く女性の方々に執筆いただく連載企画
第7回目は、スタイリスト 辻 直子さんの
ショートエッセイをお届けします。

vol.07

おしゃれに恋して。

 おしゃれを楽しんでますか? おしゃれをすることほど、女の人をキレイにしてくれるものってないと思ってます。私がスタイリストとして伝えたいのも、トレンドとかテクニック云々よりも、もっと単純なこと。「こう着たら、もっとキレイになれる」。

 雑誌で特集される、これ1枚でOKとか週5着回せる服とか。確かに、1つの服でたくさんのコーディネートが組めるのは、便利ではあるし情報としては親切ですよね。でも、実用面に振り回されて、もっと前提にある「どうしておしゃれをするの?」という、ファッションの本質が置き去りにされちゃっているような気がします。

 本当に似合う服、使える服。いわゆる「ベーシック」と言われるものも、みんな違うはず。顔も違えば、体格も違う、ライフスタイルだって様々。ベーシックという言葉に安心して、本当はピンときていないのに着てしまっている。そんなことないですか? みんなと同じという安心感をくれるものより、欲しいのは自分をキレイに見せてくれる服。体裁のいい服を10枚買うよりも、「褒められる1枚」を買うべきじゃないのかなって。わがままでいいんです、おしゃれは。

 自分をキレイに見せる服の選び方—。まずは、感覚を大切にすることだと思います。ショップにフラッと入ったとき、無意識に手に取っていた服。着る勇気はないけれど、いつも気になっている柄や色。それは自分のなかの“好き”という、素直な気持ち。せっかく感覚が反応しているんです、無視したらもったいない。認めてあげなきゃ(笑)。

 次は、フィッティング。これって、すごく大事なこと。私は、フィッティングしないで買うことは絶対にしないんです。洋服だけじゃなく、ピアスなどのアクセサリーも。自分の体型や肌の色、ヘアスタイルとの相性、ちょっと動いたときにどう見えるか。前だけでなく、横や後ろ姿はどう? 試着の段階で見えることがたくさんある。そこで「似合わないな」と諦めるのも、ひとつの発見であり、大事な“気付き”。買う前にそれだけのことが理解できたら、あとがラクになりますよね。フィッティングだけでなく、ショップに足を運ぶだけで、おしゃれしたい気持ちも引き上げられる。素敵なアイテムに囲まれると、ワクワク、ドキドキしてきませんか? 私はずっとそうなんです。そのとき、おそらくキレイになるためのドーパミンが沢山放出されているはず。やっぱり本物に触れることに勝る刺激はないのかなって思います。

 その次は、探ること。どうしたら気に入って買ったものを、自分のものにできるか。それを探る作業です。例えば、カラースカート。全員がTシャツを合わせたコーディネートが正解ではなく、シャツのほうがさり気なくはまるという人もいれば、ノースリーブのほうが素敵に着こなせる人もいる。法則をヒントにするのはいいと思います。でも、法則に縛られるとベストな答えは見えてこない。40代女性は、ファッションの経験値も高いはず。好みの見え方や、似合う形が本当はわかっているはずなんです。


 最後は、自分らしさをどこに残すか。

 私の場合は、ヘアスタイル。もう長年このヘアスタイルで、実は何度もヘアスタイルを変えたいと思ったことはあるんです。ついこの間も、どうしようって悩んでいて。そうしたら、近しい人に「そのヘアスタイルじゃなくなったら、直子じゃなくなる」って言われたんです。どんな格好をしても、私らしくいられるのは、このヘアスタイルのおかげだったんだって。これが私のアイコンだったんだって、改めて気づかされました。

 それがフラットシューズの似合うキュッとした足首、デニムをきれいに履けるお尻、シックな色が似合うきれいな肌。アイテムでもいいんだと思います。黒が似合うと思ったら、いつもどこかに黒を身につけるとか、ワイドパンツが好きならそれでもいい。「らしいね」って思われるトレードマークが見つかると、それがスタイリングの軸になる。個性あるスタイルって、そこから生まれるのかなって思います。ただ、その軸が変わるときがくることもわかっておきたいですよね。

 年を重ねることで、顔つきも、スタイルもかわってくる。好きなものに執着しちゃって“滞ってしまう”のは、私たちの年代はちょっと危険。似合わなくなるものもありますが、逆に今だからこそ着こなせるものもある。年をとるって、そんなに悪いことばかりじゃないですよ(笑)。そう考えると、来年再来年は着れないかもしれないけど、今の私を最高によく見せてくれるもの。“瞬間を楽しめる服”を、もっともっと買うべきなんじゃないのかな。

 好きって気持ちを忘れると、おしゃれは退屈になる。「人を好きになる気持ち忘れちゃった」、それとちょっと似ているかも知れませんね。私は一生、おしゃれに恋していたいんです。

profile

辻直子 / Naoko Tsuji

『BAILA』『Marisol』や『Otona MUSE』など、多くの女性ファッション誌で活躍するスタイリスト。女優、タレントのスタイリングやファッションブランドのディレクションまで幅広く手がけている。フェミニンで品よく、女性らしいコーディネートは、多くの女性から高い支持を得ている。

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